ついに城主・井伊直虎(柴咲コウ)が誕生した「おんな城主 直虎」。放送開始から3カ月が経過し、ドラマの全体像が少しずつ見えてきた。そこには、これまでとは一味違う戦国時代を描こうとする意欲がうかがえる。 一般的に戦国時代といえば、群雄割拠、下克上の世を武将たちが勝ち抜いていく国盗り合戦、立身出世物語のイメージが強いだろう。だが本作の主役となる井伊家は、大大名・今川家に従う小さな領主の上に、家を継ぐ男子もほぼいないという危機的状況にある。世に打って出られる状態ではない。 戦国物の定石ともいえる群雄割拠の物語を外して本作が描くのは、今川家の圧力の下で生き抜こうとする井伊家の人々の姿。そしてもう一つは、直虎と領民である百姓たちとの関係である。出家して次郎法師を名乗っていたころから直虎は、托鉢(たくはつ)をしたり、農作業を手伝ったり、百姓たちと日常的に触れ合う場面が見られた。大大名では難しい、庶民