無害にしたはずだったのに...。 18ヵ月前、シカゴ大学の分子遺伝学・細胞生物学の教授のマルコム・カサダバン氏が研究のためペスト菌を扱っていました。ペストといえば中世ヨーロッパなどで大流行した病気ですが、昨今では先進国での感染例はほとんどありません。 しかも研究で使われるペスト菌は遺伝子操作によって弱体化されていて、人間に感染することはないはずでした。にもかかわらず、カサダバン氏はなぜかペストに感染してしまい、急きょ病院に運ばれた数時間後に亡くなってしまったのです。 多くの研究者にとって、弱体化されたペスト菌によって死に至るケースが発生したのは衝撃でした。1959年以降、弱体化したペスト菌では、死亡した例はおろか、感染した事例すら一件もなかったのです。いったい何が起こったのでしょうか? その後の調査で、カサダバン氏の感染の要因になったのは、彼が遺伝子変異による病気のヘモクロマトーシスにかか