学生時代、生物調査のために同級生たちと森でテント生活をしたことがある。当然、トイレはない。必然的に穴を掘ってそのへんにすることになるのだが、その方法には鉄の掟があった。 「紙は使うな、葉っぱで拭け」 ティッシュは簡単には分解しない。自然環境を学ぶ者として、紙を使わないことは最低限の自然への礼儀であった。 「たかが、野ぐそ」と侮るなかれ。適した葉っぱを見つけるには、鋭い観察眼と植物の知識が要求される。もし、トゲのある葉っぱだったら。見た目はOKでも、毒があったら。トゲや毒はなくても、せっかくならば保水力のあるやわらかな質感のものを使いたい。 こうして私たちは「究極の葉っぱ」を求めて観察し、図鑑を調べ、最適と思われる葉っぱをもつ植物が生える環境をさぐり、植物の知識だけでなく仲間同士の絆をも深めていった。情報交換しなければ、こんな極めて特化された用途を教えてくれる資料など、なかったからだ。 とこ