栗原が目指すのは、誰もが失敗なく、しかもおいしく作れるレシピ。そのために栗原は、材料の分量や切り方、火にかける時間や加減にいたるまで事細かに数値化・具体化したレシピを作る。もちろん、使う材料の新しさ、鍋やコンロの違いなどによって、調整が必要なのは百も承知だ。だが、栗原はそうしたことも踏まえた上で、どんな条件でも、おいしさに大きな振れ幅がなく作れる、唯一無二のレシピを発見しようと、試作を繰り返す。栗原のレシピが支持されるゆえんの一つがここにある。 この夏、栗原は、フランスのリンゴ菓子・タルトタタンのレシピを作り上げるために、試作を50回以上繰り返した。栗原がレシピ作りにそれほど注力するのは、おいしい手料理が、家庭の中で大きな力を持つと信じているからだ。料理がおいしければ、イライラして帰ってきた夫の機嫌も和らぐかもしれない。会話のない食卓にコミュニケーションが生まれるかもしれない・・・。これま