目が覚めると、左手が自分のものとは違っていた。 手首から指先にかけてが歪であり、人間のそれとは明らかに形が違う。 血色の悪い、鱗うろこのようなものがびっしりと生え、それはごつごつとした灰色の手だった。 そして、確かに左手の人差し指、中指、薬指の爪に「壱、弐、参」と順番に数字が浮かんでいた。 夢ではなかったのだ。 昨晩、眠りの中で男の声を聴いた。 その声はわたしに、願いを三つだけ叶えてやろう、と話しかけてきた。 わたしがどんな願いでもか、と問うと、どんな願いでもだ、お前が現実的に想像できるものであれば叶えられる、ときたものだ。 「ただし、その見返りとして三つ目の願いを叶えたあと、この世界に終焉が訪れることになる。 よく考えて、願いを叶えることだな。 終末の使者と成り得る者よ」 灰色の、枯れた枝のような指を見つめながら、もともとない頭を使って考えをめぐらす。 別に悲観的な心情に毎日が染まってい