白い空間『綱渡り』 その、夢というものを見たことがない。 皆と同じように、一日の終わりとしてベッドに横たわり眠りに入る。 そこまでは同じだろう。 ただ、その眠りから先が大きく逸脱していく。 次の瞬間、眼前に広がるのは真っ白い世界。 なぜか私は現実世界で眠りに入ると「白い空間」へと誘われるのだ。 そこは見渡す限りに真っ白い世界が広がっていて、しばらくすると白いドアが無数に現れだす。 その内の一つを選び、潜らないことには現実へ戻れない。 毎夜、私はいつも摩訶不思議な世界に身を置くことになる。 その世界の環境や風土、起きている事件や抱えている問題などの情報が、時間と共に徐々に脳と体に染み渡っていき、気付けば私はその世界の住人になってしまう。 生きるために染まる、とでも言うのか。 痛みも感じれば熱さも寒さも、空腹感もある。 命の危険にさらされたことさえ幾度もあるが、とりあえず現実世界で目を醒まして