新潟県小千谷市の塩谷地区。あの山古志に程近い山間の寒村である。したがって、2年前の新潟中越地震で壊滅的被害を受けたことでは例外ではない。戸数50戸、その貴重な後継者になるはずの小学生3人が犠牲となった。 復興は、巨額の国費を投じてすすめられている。しかし、塩谷が元の姿を取り戻すめどはついていない。塩谷にとって元の姿とは・・・・。 1983年7月、12億円を投じた塩谷トンネルが完成、直後に村には"あの人"がやって来た。田中角栄。元首相にして刑事被告人。ロッキード事件の一審判決を控えていた。 田中のツルの一声で決まったといわれた、塩谷トンネルの建設。戸数60戸の僻地に12億円は過剰投資ではないかと議論を呼ぶ。「角栄トンネル」、田中政治の象徴として、全国の注目を集めた。だが、そこには住民の苦闘の歴史があった。 町へ出て行くのに立ちはだかる雨乞山。人々は険しい峠を越えて往来した。だが、豪雪の時期に