「それで、ポロスよ、哲学者の能力とは一体なんなのかね。また、それは教えることができるものなのかね。」 (しばらく間が空く) 「ポロスよ。反応がないがどうしたのかね。」 「すみません、通勤してました。」 「では、改めて。ポロスよ、哲学者を哲学者たらしめる能力とは何なのかね? また、それは教えられるものなのかね?」 「そうですねえ。難しいドイツ語の哲学書を読めることではないでしょうか。」 「しかし、ポロスよ、その能力は君をせいぜいドイツ哲学研究者にするだけではないだろうか。それに、それは翻訳家だって必要な能力だろう。君はドイツ語の本を訳す人を哲学者とは言わないだろう。」 「それもそうですね。では、哲学者が持つ能力とは、正しく推論する能力のことではないでしょうか。」 「たしかに、正しく推論する能力は哲学者に必要だろうね。しかし、ポロスよ、はたしてそれは哲学者に限ったことなのだろうか。有能な裁判官