ブックマーク / www.newsweekjapan.jp/reizei (69)

  • 「追い出し部屋」と「体罰自殺」の何が問題なのか?

    年末の朝日新聞に「追い出し部屋」という大企業のリストラ策の一環についての記事が掲載されて話題になっています。この種の問題は20年ぐらい前からあり、終身雇用契約のために解雇が難しい中で、企業としては「リストラ対象」として指名した人間を、意図的に極端な閑職に追いやり最終的に自分から辞表を出させるというものです。 この問題については、「非現実的な雇用に関する規制が残っているからダメなんだ」という文脈で論じられることが多いようです。企業が一方的に従業員を解雇することができず、正社員の終身雇用が保護され「過ぎている」というわけです。この論調は「そのために、若い世代の労働機会が奪われている」という論理に結びつけることもされています。 私は、この問題に関しては、ある程度の規制緩和は必要ではないかと思います。但し、その場合は経営層から管理職層、専門職層に対して整理解雇の条件を緩くする一方で、非管理職、非専

  • 中国の「反日暴動」がアメリカでほとんど報道されない理由とは?

    先週末から今週はじめにかけて、中国の各地では反日を表面的なスローガンにした一種の「反秩序暴動」がエスカレートしているわけですが、アメリカではこのニュース、驚くほど小さな扱いとなっています。例えば、暴動が格化した直後の16日の日曜日には、ニューヨークタイムス、CNNといったメディアでの扱いはほとんど「ゼロ」でした。 週明けの月曜になって、少し報道が出始めていますが、例えば中国にあるパナソニックの工場が操業停止しているなどといった「経済記事」的な扱いが主で、それに「在北京日大使館」に卵が投げつけられたなどの報道が加わっているだけです。実際に起きている、大規模な破壊行動については、一切伝えられていないと言ってもいいと思います。 私は各メディアの内情を知る立場にはないので、あくまで憶測に過ぎませんが、そこにはある種の「配慮」が感じられます。では、仮に「中国への配慮」があるとして、そこにはどんな

  • 鴻海精密によるシャープ買収をどう考えるのか?

    それにしても、このニュースの伝わり方がそもそも気に入りません。まず、資提携だとか苦渋の選択だという見出しで「ボカして」いますが、実質的には台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業グループによるシャープの買収であり、日の大規模なエレクトロニクスメーカーの一角が、外資の軍門に降ることを意味します。 鴻海は、まずシャープ体の筆頭株主になる(報道によれば比率約10%)ことに加えて、主力の液晶事業の中でも重要なカラーフィルター技術を保有した堺工場は、子会社のSDPに移管した上で鴻海のオーナーや関連会社が46.5%を支配するというのです。SDPに関しては、シャープ体が46・5%、鴻海側が46・5%という報道資料もありますが、シャープ体については10%弱を鴻海が持つのですから、実質はSDPの51・2%は鴻海のものになります。 こうした買収劇を「資提携」とか「共存共栄策」などという曖昧な言い方で報道する

  • アメリカで「病児保育」が社会問題にならない理由とは?

    まず、現在の日社会では病児保育の問題は非常に深刻であり、この問題を解消するために病児保育を引き受けるNGO団体が活動を始めています。その多くは私の知る限り良心的なものが多いようで、例えば病児保育を担う一方で働き方の改善を提言したりする団体の努力などには注目をすべきだと思います。 それ以前の問題として、日の現状において病児保育の問題、つまり「休めない、早く帰れない時に子供が熱を出したら大変」という問題を抱えている家族を批判はできません。社会的な条件、生き方の前提が異なる「専業主婦カルチャー」を前提にして「子供が病気なのに人に預けるのはかわいそう」という非難をすることは間違っていると思います。 ちなみに、アメリカにも「病児保育問題」が全くないわけではありません。特にシングルペアレントの場合、子供が突発的に熱を出して学校の保健室に引き取りに行かねばならないケースなどでは、実際に困っている人が

    yoyoprofane
    yoyoprofane 2012/03/08
    シッター安くなんないかなあ…。
  • リック・サントラムの「宗教保守主義」はどうして支持を集めるのか?

    11月の大統領選へ向けた共和党の候補者レースは、来週28日にミシガン州とアリゾナ州という大きな州での予備選が控えています。その翌週が「スーパーチューズデー」ですので、その前哨戦という意味でも28日は重要です。 それ以上にロムニー候補に関して言えば、この2つの州の意味合いは非常に大きいのです。まず、ミシガン州というのはロムニー候補の故郷であり、父親が有名な州知事であったという大事な場所です。またアリゾナ州というのは、ユタ州、カリフォルニア州、アイダホ州などと同様に、モルモン教信者の多い地域で、ロムニー候補にとっては絶対に落とせない重点州だと言えるでしょう。 ですが、ここへ来てライバルのサントラム候補が猛烈なチャージをかけてきています。世論調査の数字としても、ミシガンではサントラム候補がやや先行、ロムニー候補の強かったアリゾナでも、サントラム候補は猛追しており、最新のCNNなどでは互角になった

  • ニューヨーク・フィルの「iPhone 着信音事件」、その時指揮者は?

    昨年末にご紹介した小澤征爾氏と村上春樹氏の対談について、一点気になる部分がありました。それは往年の巨匠レナード・バーンスタイン(『ウェストサイド物語』の作曲者でも有名)が音楽監督だった時代に研修生として指揮をした経験に基づいて、小澤氏がニューヨーク・フィルハーモニーの演奏姿勢について否定的であった点です。 小澤氏の批判は、特に弦楽器の奏法が「軽い」というものでしたが、この点に関しては一昨年からアラン・ギルバート氏が音楽監督に就任したことで大きく改善されています。楽団の名誉のためにも、そのことを申し上げておきたいと思います。このギルバート氏は、日人のお母様が同楽団の現役バイオリスト、お父様も同楽団のバイオリニストで人もバイオリン奏者であり、就任早々に弦楽セクションの奏法を変更しているからです。 さて、このギルバート氏ですが、NYフィルの音楽監督として最も力を入れているのは、グスタフ・マ

  • CNN向け「アリガトウCM」が「残念」な理由とは?

    東日大震災に対してアメリカは米軍を中心に多くの支援をしました。日政府として、これに謝意を示すのは良いことだと思います。また、このCM放映に際して日サイドのクリエーターの方が、政府の細かな注文や規制などに耐えてCMを作ったと察すると、安易に批判するのは失礼かもしれません。ですが、26日からケーブル局の「CNNヘッドライン」で放映の始まった、この「アリガトウCM」を評価することはできません。 そこには日の対外的な広報に見られる誤りの典型があるからです。厳粛な時に厳粛な意図で行われたことを批判するのは気が重いのですが、こういう時に学べなくては永遠に学べないと考え、あえて申し上げる次第です。 まず「顔」が見えません。 謝意を示す際に、一切「顔」の見える個人が出てこないというのは異様であるのと同時に主旨が伝わらない危険があります。「無名のネイティブ英語話者の声優」をナレーターに使っているのも

  • 東電原発事故、アメリカの当面の見方から「全体像」は浮かぶのか?

    現時点では原子炉の冷却用に投入された水が、放射性物質を含んだまま流出して海水を汚染しているという問題が一番の懸念材料になっているようです。一方で、政府の見解(例えば4月3日にTV番組で示され報道された、細野豪志首相補佐官見解)としては、汚染した水の処理をしながら炉内の燃料を冷却することで、最終的には放射性物質の大気中への発散を止めることができる、そこまで数カ月というレンジで考えているようです。 この問題に関するアメリカ側の見方ですが、ここへ来て何人かのトップレベルの専門家から現状に関する分析が発表になっています。一つ大きな話題になったのは、4月1日付の「ニューヨーク・タイムズ」が報道したスチーブン・チュー米エネルギー長官の発言です。チュー長官は、ノーベル物理学賞を受賞しているこの分野の権威ということで、オバマ大統領に請われて内閣に入っているのですが、長官の発言は現時点でのアメリカにおける「

  • 東電の原発の状況を「戦争」に例えるのは不適切ではないのか?

    東電原発事故の状況が一向に好転しない中、政府や東電の対応を見ていると、第二次大戦の敗戦に至った日的な組織の欠陥が繰り返されているのでは? 池田信夫氏がそのような観点から『失敗の質』というを参考にするよう勧めています。これは経営学者の野中郁次郎氏が、防衛大学の戦史研究家の戸部良一、寺義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀の各氏と行った共同研究で、旧日軍が組織として持っていた脆弱性を客観的に分析したです。 確かに今回の原発事故とその対策において、こうした「日的組織の脆弱性」を意識することは有効だと思います。正に、今読まれるべきだとも言えるでしょう。ですが、同時に今回の事態は「戦争」とは全く異なる問題だということも指摘しておきたいと思います。池田氏は勿論そんなことは言っていませんが、一部に「軍政を敷くべき」などという、妙な言論があるのが気になるからです。 まず、今回の事故の経緯に関