片渕須直・この世界の片隅に ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ 片渕須直・この世界の片隅にのページです。 片渕須直監督『この世界の片隅に』は、ことし最高のアニメ映画だ。のんの声優起用、その奇蹟的な成功により、作品の「口調」がふんわりふわふわしている。それと同様の「ふわふわ」はコトリンゴの音楽(声がのんに似ている)、パステル調ともいえる淡い色彩設計、ある悲劇的な瞬間にその本質を露呈する輪郭線の、「定まらなさ」をふくみこんだうごき、ときに二拍子にまで短縮されるフリ-オチ形での挿話の連鎖などにもみとめられる。そうした「ふわふわ」から戦争による残酷=「欠損と死と喪失」が予想外に舞い込んでくる。「まいこみ」に「ふわふわ」があり、現実の表情とはそんなものなのだろうとおもう。もちろんそれに息を呑む。これほど残酷の実相をえがきえた作品など、ほぼ存在しないだろう。 実写なら、黒木華を主役して、亡くなった