判決後、喜びに思わず両手で顔を覆うポニーテールの中年女性。狭い法廷に拍手と歓喜の声が響き渡る。ガラス張りの被告人席から出るように促された彼女は、集まった家族や支援者らと抱擁を交わした。さらに外に出て裁判所の前に立つと、ナザルバエフ大統領と同胞たちへの感謝の言葉を述べ、「カザフスタン万歳!」と叫びながら力強くこぶしを突き上げた1。 この女性の名はサイラグル・サウトバイ。中国・新疆ウイグル自治区出身のカザフ人で、2018年4月、偽造パスポートを使ってカザフスタンに不法入国した罪に問われていた。対中国境に近い南東部の町ジャルケントの裁判所は同年8月、彼女に執行猶予付き懲役6カ月の刑を言い渡した。焦点となった中国への強制送還については、入国目的が家族との再会であったこと、また夫と子ども二人がカザフスタン国籍を有することを考慮し、行わないとされた。 サウトバイの裁判は、カザフスタン国内のみならず国際
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