ぼくにも、エッセイを書いていた時期があった。 エッセイといえども、丸々、事実を連ねるわけではない。 多くの作り事もあるし、演出もある。 そこに、読者に届けたい、ほんの少しの「ほんとう」を入れる。 エッセイを書き始めて、さまざなな御褒美を もらったが、実のところ、自分が書いているのはエッセイと 呼べるものかどうなのかという思いは、今以て存在はするけれど。 紹介させていただくのは、ある地方の某新聞社が募集していて、てっぺんの賞をいただいた。 今でいう「不適切発言」ととれる部分があるが、それこそが被害者側の正直な想いなので、綺麗事なしに、原文のまま転載する。 付け加えると、その部分こそが、選考時、いちばん高く評価された箇所でもあった。 「冬水仙」 今、ぼくが病院のベッドで夢に見るのは、あの遠い日々のことだ。 ぼくは、つらい現実から逃れるために、冬の数週間を、北陸の母方の叔母の家で過ごしたことがあ