痴漢冤罪の被害者は何日にもわたって留置場に勾留され、休職や退職を余儀なくされる。精神的なダメージも大きく、損害は計り知れない。 弁護士 秋山賢三 構成=村上敬 無実だったらこう宣告「虚偽申告罪で告訴します」 2009年4月14日、一、二審で不当な実刑判決を受けていた大学教授が、最高裁で無罪判決を勝ち取った。痴漢事件の刑事訴訟で、最高裁が逆転無罪判決を出したのは初のケース。しかも「高裁への差し戻し」ではなく「自判」だった。 これまでわが国の痴漢事件裁判は、客観的証拠より捜査段階の自白や被害者の供述を過度に信用してきた。それが「疑わしきは罰せず」の原則に立ち返ったこの判決によって、潮目が大きく変わるだろう。 ほかの痴漢事件裁判への影響は早くも表れている。2009年6月、東京高裁は西武新宿線で起きた痴漢事件について、「被害者の証言に疑問」として一審の実刑判決を破棄。この二審の裁判官は、前述した