自民党派閥の裏金事件で、関与が取り沙汰された派閥の幹部議員は立件されず、根本的な派閥解消は実現しそうにない。政治批判を重ねてきた作家、島田雅彦さん(62)は静かな口調に憤りをにじませる。「自民党は保守ではなく『保身』。党内調整が政治だと思っている彼らを政権の座から追放すべきだ」 島田さんが「世直し」をテーマに政府要人の暗殺を描いた長編「パンとサーカス」を刊行したのは2022年3月のこと。3カ月半後に起きた安倍晋三元首相の銃撃事件を見越していたようだと話題になった。17年出版の「カタストロフ・マニア」でも、新型コロナウイルス禍を予言したかのような感染症の流行と国家統治の崩壊を描いた。 過去に文学者も戦争に協力した反省から発信を続け、現実社会で募る憤りをフィクションに落とし込んできた。作品に共通するのは、利権を手放さず国民から財産や自由を搾取しているとみる政治家と官僚への批判、政官界が支え「日