集合住宅と日本人―新たな「共同性」を求めて [著]竹井隆人 [掲載]2007年12月02日 [評者]北田暁大(東京大学准教授・社会学) ■他者を意識した緊張感ある共同体を かなり論争的な本だ。タイトルを見ると、集合住宅におけるコミュニティーや共同的なまちづくりの重要性が、生温かい理想主義的な雰囲気を伴いながら描かれているのではないか、と私たちは考えてしまう。しかしこの本は、私たちが何となく「善(よ)きもの」と前提しているような「コミュニティー」や「まちづくり」のイメージに違和を決然と表明する。 たとえば、住民たちの交流を推進するコミュニティーの構築について。著者はその重要性を一定程度認めつつも、それが多くの場合曖昧(あいまい)な形で語られ「はなはだ情念的で表面的な意味合いでの人間同士のつきあい」として捉(とら)えられているのではないか、と論じる。コミュニティーをめぐる言論空間のなかで、住民