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海外の長編小説ベスト10 越川芳明(アメリカ文学・ボーダー文化論) どんなに狭隘な世界に住んでいても、私たちの生活はグローバルな世界経済、国際政治と切り離されてはいない。 自分だけに通用する常識やイデオロギーを「他者」に投影するような素朴な語り口では、そうした複層的な世界を表現できないばかりか、害悪でさえある。 小説のよしあしは、そうした複雑きわまりない世界や語り手の自意識をどのように処理するかにかかっているが、それを大まじめにやりすぎると、一般読者を遠ざける難解なものになってしまう。 しかし、ここにあげた小説は、複雑な世界と歴史を扱いながらも、物語としてリーダブルなものばかり。すぐれたポストモダン小説の模範だ。 1コーマック・マッカーシー(黒原敏行訳)『血と暴力の国』(扶桑社文庫) 2ブルース・チャトウィン(芹沢真理子訳)『ソングライン』(めるくまーる) 3オルハン・パムク(和久井路子訳
◇羅漢山から始まる物語◇ 物語は、飯能市の羅漢山(今の天覧山)から始まる。標高は197メートル。登ると15分足らずで頂上に着いた。岩の上に、コンクリート製の展望台がそびえる。 「美しい星」の主人公、飯能一の材木商一家も空飛ぶ円盤を見ようと頂上まで登った。宇宙人だという意識に目覚め、地球救済に向けて家族の団結力を増すためだという。 展望台から見る景色は、今も「美しい星」を発表した62年ごろの面影を残している。展望台の北側は行幸記念碑とその背後の森にかこまれている。南側は二、三のくねった松や低い叢林のほか、南の空の展望を遮るものは何もない。飯能は起伏の少ない低地が続くせいか、奥武蔵の山々が遠く見渡せた。 飯能は、東京都内から約1時間。当時も、都内の小学校などから子どもたちがよく遠足で訪れていたという。三島由起夫(1925―70)も、飯能駅で降りる若いハイカーたちの描写を盛り込ん
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