就職して3年が経ったころ、持っていた本を全部捨てた。 なかば自暴自棄の一大決心で。 学生時代に夢中になって読んだ書棚いっぱいの本たち。 すべて捨てさることで、それまでの自分に踏ん切りをつけ、会社員としてのアイデンティティをより確固たるものにしようとした。 会社では、二日にいっぺんのペースで徹夜して、貧乏揺すりよろしくキーボードを叩き、必死に仕事をさばいていた。 やがて書棚でほこりをかぶっている学生時代の愛読書が目に付くようになった。 文学なにするものぞ、なんの役にも立たないやつめらが! というわけで自分に必要ないものだと決めつけた。 気がついたら会社をやめていた。 会社をやめたら、本を捨てた自分がむしろ嘘になった。 一緒に心のブレーキも壊れた。 今や1万冊近くにふくれあがった蔵書たち。 居並ぶ本たちは、ただそこにあるだけで心和ませる生涯の伴侶のようでもある。 そこには、少ないながらこれまで
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