年子の弟は運動能力が著しく高く、家の壁をするするするっと登り、スパイダーマンのような格好で天井近くで鎮座している姿をよく見かけた。翻って私は、大の運動音痴。これがもう、典型的な「どんくさい」「ドジな」少年だったのだ。足は遅い。投げ方がくにゃくにゃしている。段差もなにもないフラットな道で転ぶ。 そんな私にXデーが訪れた。小学校2年生のときの運動会だ。私からしたら「わざわざ自分の醜態を、両親と祖父母にさらす日」である。案の定私はいいところなし。一方、弟はリレーのアンカーを務めた。彼が猛烈果敢に走り、凄い勢いでコーナリングを決めながら、大喝采の中ゴールテープを切る姿を私は忘れらない。この日から私は「生まれ変わったら、弟になりたい」という歪んだ想いを抱くようになった。
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