1時間半ほどで読める。才色兼備の女性と勉強にもスポーツにも天才的な男性との結婚。それがなぜ、支配と被支配の関係に陥ったのか。 その背景に自分が全的に生きられない社会のあり方が浮かび上がってくる。 運動部のマネージャーとして人望も厚く、優秀な成績で大学を卒業し、羨望の眼差しの中一流商社に総合職として入社した加奈子。しかし、世界の大舞台で活躍することを夢見た加奈子に与えられた仕事は「お茶汲み」だった。 そして、不況の時代。会社はなりふりかまわぬ人減らしを開始する。人事が始めた「研修」は、独房のような研修所にリストラ対象者を隔離し、なにもさせないこと。 唯一許される行動は、毎日1時間おきに集められて「私は給料泥棒です」などと唱和させられること。この「アウシュビッツ研修所」に送り込まれた社員は、1ヶ月と持たず変わり果てた姿で退職していった。 加奈子も“収容”されるが、東京弁護士会の人権擁護委員会が