野生を磨け 「賞味期限が過ぎていますから、すてまーす」、ラスパルマスのアパートで、キッチン周りをいつもきれいにしてくれる小出隊員が言う。 「ちょっと待て。それはまだ食えるだろう、捨てるな。」 サトシもモモも意外な顔をして無言。 (おお、こいつらは俺のことを、「ケチオヤジ」と内心思っているな) そこで俺は「賞味期限」が実はアメリカの貿易赤字解消のため日本や世界に押し付けた、アメリカの陰謀である、との真実を話した。 大体本来は「製造年月日」表示が行われていた。 ところがそれでは、地元のメーカーが圧倒的に新鮮で有利。アメリカから輸出すると商品が棚に並ぶまで少なくとも一ヵ月半のハンディキャップがある。 そこで Best Before Date (最もおいしく食べられる日付け)に表示を変更するように、圧力をかけたのだ。これは当時僕のいたアメリカ食品業界で経済外交の「大成功例」の一つと大喜びしていた。