ヒトは、実在しないものであろうと遠く離れた所のものであろうとを問わず、あたかも目の前に在るかのごとく想像する力、つまり「イメージを創る能力」を備えています。古来、多くの哲学者がこの能力に興味を持ちました。ジャン・ポール・サルトルは「想像力の問題」という著書の中で、「パンテオンのイメージを創ってごらん。その柱の数を数えられるかい?」という問いを出して、イメージと実際の視覚との差を論じています (図1)。 図1: イメージを創る能力は我々の脳のどのようなしくみによって実現されているのでしょうか? そのしくみは実在するものを見る通常の視覚と何が違うのでしょうか?サルトルは「想像力の問題」の中で、「パンテオンのイメージを創ってごらん。その柱の数を数えられるかい?」との問いを出しました(本文参照)。 ご存知の通り、パンテオンはパリにあるギリシャ風の神殿ですが、柱の数が多いのとその配置が入り組んで