タグ

ブックマーク / umiurimasu.exblog.jp (6)

  • 「ねじまき少女」 パオロ・バチガルピ | 族長の初夏

    堪能しました。エネルギー資源不足と環境汚染にあえぐ近未来都市バンコクの混沌、そこに暮らす人々の悲哀や怒りや欲望を複数POVで緻密に描いていく、亜熱帯ムード満点の群像劇。「最近の小説でギブスンっぽいやつを読みたいんだが」という人には、まずおすすめの一品かと。 記録的な勢いでSF賞をとりまくった米国でのヒットに比べて、日での反応はやや戸惑いまじりのようにも見えますが、これは宣伝文句(「グレッグ・イーガンとテッド・チャンを超える云々」)に語弊があるのかもしれません。実際に読んでみたら、イーガンやチャンのような論理SF?的な方向性の小説ではまったくありませんでした。ひきあいに出すなら、やはりギブスンあたりがよいでしょう。都市の底辺層を顕微鏡的に観察していく視点や、先端技術と妙な日観のまじりあったおかしな東洋的エキゾチシズム。いかにもサイバーパンクっぽい香り。 しかし、往時のサイバーパンクを髣髴

    「ねじまき少女」 パオロ・バチガルピ | 族長の初夏
    yuiseki
    yuiseki 2011/06/02
  • テッド・チャン インタビュー [2010.07] "On Writing" | 族長の初夏

    つい昨日、テッド・チャンの直近のものらしきインタビューが Boing Boing にアップされました。昨年の来日時のインタビューの翻訳 「 「地獄とは神の不在なり」を巡って」の倍近いボリュームがあるようです。以下、特に面白そうな中盤の部分を少しだけ個人的に日語訳したものを載せてみようかと思いますが。時間と自由意志、最新作 "The Lifecycle of Software Objects" の動機について語っているあたりです。あと、日での妙なチャン人気の理由とか。 あなたの作品の多くは未来予知に関係するものごとを扱っています。時間の性質の何があなたの心をとらえるのでしょうか?自由意思の問題。タイムトラベルのすべての面白さの根にあるのは自由意思だと僕は思っている。 僕のいうタイムトラベルには、未来から情報を受け取ることも含まれる。それは質的にだれかが未来から旅してくるのと同等のこと

    テッド・チャン インタビュー [2010.07] "On Writing" | 族長の初夏
    yuiseki
    yuiseki 2010/07/24
  • 「ダイヤモンド・エイジ」p2 ニール・スティーヴンスン | 族長の初夏

    ひとことでいうとサイバーパンク版「母をたずねて+小公女」! というふうな安直なたとえ方で済ませられる作品ではもちろんないのですが、膨大な情報の奔流の中に少女の成長物語というシンプルな糸が目立つように通してあったので、とりあえずそのへんにすがりつきながら読んでみました。それでも、小さなノミで巨大な岩塊をひとかけらずつ削っていくような根気の要る作業でしたが。 その他、緻密に構築された近未来テクノフィクションとして読むもよし、奇抜な通信プロトコルのアイデアにもとづいて世界の変貌を描く情報SFとして読むもよし、子供向けのおとぎ話の体裁でチューリングマシンの原理を説明してくれる「しょうがくいちねんせいからの並列計算」テキストとして読むもよし、国家なき未来の中国に再燃するヴィクトリア思想と儒教思想の激突を描く社会シミュ小説として読むもよし。読み手の興味や資質に応じてさまざまな楽しみ方ができる、非常に懐

    yuiseki
    yuiseki 2010/02/22
  • 日本はいつから「未来」であることをやめたのか?(サイバーパンク的な意味で) : 族長の初夏

    「ブレードランナーやニューロマンサーの頃って未来の日がやたら流行ってたけど、あれってなんで廃れたの?バブルがはじけたから?」「いや、アニメやマンガがあたりまえになりすぎて目立たなくなっただけだろ」みたいなことをアメリカSF好きな人たちが言っています。日SFファンにとっても面白い話題なのではないでしょうか。で、少し訳したりしながら僕も考えてみました。米国のサイエンスフィクションはかつて、ブレードランナーからニューロマンサーまで、日に魅了されていた。 日のものはすべて、アメリカの小汚い美意識よりもクールで洒落ていて輝かしく見え、日は支配者となるべく運命づけられた存在だった。(中略) ウィリアム・ギブスンが「ニューロマンサー」の執筆中にブレードランナーを見に行ったというエピソードの中で、彼は、映画が描く未来のヴィジョンと彼の小説のそれがあまりにも似すぎていたことにショックを受け、も

    日本はいつから「未来」であることをやめたのか?(サイバーパンク的な意味で) : 族長の初夏
    yuiseki
    yuiseki 2009/07/07
  • 「虐殺器官」伊藤計劃 | 族長の初夏

    円城塔と共に期待の大型新人として鳴り物入りのデビューを果たした伊藤計劃の第一作。これはあちこちで騒がれるのも納得ですね。 テレビゲームのように痛みも感情もともなわない、近くて遠い戦争と殺戮。そこには核の冬や世界水没といった古典的な終末観の影はもう残っていない。けれど、マクドナルドやスターバックスのある「こちら側」の世界の人間を包みこむリアリティの喪失は、どうやら別の意味で陰惨きわまる終末につながっているらしい。それは、アフター911のこの世界で平和な日常を謳歌している僕たちが逃げようのない、恐ろしく怠惰で空虚な世界の終わりのかたち。 「虐殺器官」は決して空想の物語ではありません。この作品はたぶん、今この瞬間にもあなたの家のリビングルームに出現しつつある暗黒の終末を、ありのままにレポートしてみせているだけなのです。もっともそれは、痛みも苦しみも周到にフィルターアウトされ、あえて直視しようとし

    yuiseki
    yuiseki 2008/10/23
  • 「ラギッド・ガール 廃園の天使II」飛浩隆 | 族長の初夏

    今、「日SF界で一番期待している作品は?」と聞かれたら、僕は迷わず「飛浩隆の次回作」と答えます。これほど残虐な、それでいて愛らしい小説を、これほどきめ細かいことばで書く同時代の作家を僕は他に知りません。マジベタ惚れです。 「象られた力」から「グラン・ヴァカンス」そして「ラギッド・ガール」までをつないだ快楽度曲線を外挿していくと、次回作「空の園丁」はいったいどんな凄まじいことになってしまうのか!? 考えただけで脳内麻薬が耳穴からあふれてきよるわい。 前作「グラン・ヴァカンス」では、仮想空間のリゾートに住むAIたちと謎の侵略者との熾烈な戦いが描かれました。第二弾となるこの中編集では、裏舞台である現実世界の視点が導入され、仮想世界の背景や設定が徐々に明らかにされていきます。 以下、各篇ごとの読みどころ紹介。 「夏の硝視体」 仮想の楽園〈夏の区界〉の平穏な日々のひとこま。漁師ジョゼに惹かれる少

    yuiseki
    yuiseki 2008/09/25
  • 1