人間の味覚はどこまで信用できるのか――そんな疑問を抱いたのは、何年か前にフランスで捕まったワイン偽造団の記事を読んだときだ。 同じワインでも、ボルドーのメドック第1級とかブルゴーニュのロマネ・コンティなどの有名銘柄はものすごく高い。そこでワイン偽造団は、こうした超高級ワインのラベルを偽造し、チリやペルーなどの安い新世界ワインのボトルに貼って一流レストランに卸していた。 なぜこんなことができたのか。裁判で一味の首謀者は次のように証言した。「ボルドーとチリワインのちがいがわかるソムリエなんてどこにもいない」 これはけっこう衝撃的だ。1本何十万円もするフランスワインと千円札数枚で買える新世界ワインが同じだなんて……。 経済学者の人気者スティーヴン・レヴィットとジャーナリストのスティーヴン・ダブナーの『0ベース思考』(ダイヤモンド社)に、これを実際に実験してみた話が載っている。 料理とワインの評論