1993年、フランス人で電気技師のエミル・ルレイは、北アフリカ・モロッコ南部の街タン・タンを出発し、モーリタニアに向けてサハラ砂漠の西側を車で縦断しようとしていました。それはエミルが以前にも横断した経験のあるルートで、この長旅に向けて彼はそれなりの準備をしていました。しかし彼がこのとき乗っていたのは砂漠地帯の走行向きとは言えない、「シトロエン2CV」というクラシックタイプの車両。この車が原因で、彼は人生最悪のアクシデントを経験することになります。 旅を初めた直後、エミルは国境近くで足止めを食らいます。当時、モロッコは内戦で軍事的な緊張が高まっており、検問を敷いていた警察からタン・タンへ引き返すよう指示されたのです。同時に、タン・タンまで軍関係者を同乗させるようにとの要求を受けました。 エミルはこのとき、シトロエン2CVにかけている保険では同乗者はカバーされていないという話をでっち上げて要求