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短編小説に関するyuka7rin12のブックマーク (5)

  • だから、なんだと言われても・・・。シリーズ その33 - 菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

    『出んわ』 休日の午後。 都会の狭いアパートの一室。 彼氏は、ゲームに熱中している。 彼女は、雑誌をめくる。 二人は、ほぼ同棲に近い暮らしをしていた。 部屋には緩やかな倦怠の空気がよどんでいる。 彼女が、ため息に続けて言った。 「どっかいこう。外、出ようよ」 「めんどいし、寒い」 「ぶー」 彼女は、携帯電話をいじる。 家の電話の電話が鳴る。 彼氏は、ゲームを止め、子機で出る。 「もしもし、稲葉ですが」 すると、受話器の向こうからは彼女の声。 「もしもし、佐藤ですけど。散歩でいいからさ」 彼氏は、無言で電話を切り、子機を置く。 「コンビニでいいからさぁ」 「いってくればいいじゃない」 「一人じゃさぁ」 「二人で行く距離じゃないだろ」 「ぶー」 「ここのとこまで終わったら、考えるから」 彼氏は、ゲームに戻る。 彼女は、電話の子機をいじりながら言う。 「この狭い部屋で、この子機はだいぶ実力を発揮

    だから、なんだと言われても・・・。シリーズ その33 - 菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。
    yuka7rin12
    yuka7rin12 2010/04/14
    電話をテーマにした、短編小説。 子機の通話範囲がどこまで伸びるか試す、お話。
  • だから、なんだと言われても・・・。シリーズ その32 - 菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

    『コオドリする』 かまぼこのような月、街のネオンを映した青い雲。 遠くで車の音、電気で機械が震える音。 人気のない公園、ぽつんぽつんとした灯り。 買い物帰りの恋人同士が、ベンチに腰かけている。 かしこまった紙袋をお供している。 彼女は、袋から、買い物した物を一つ出して言う。 「ほらさ、嬉しいときに小踊りするって言うじゃない」 彼氏は、答える。 「言うね」 「うん、小踊りって言うぐらいだから、小さい踊り、ちょっとした踊りってことよね」 「そうだろうね」 「たぶん、踊りになってない思わず出ちゃった動きみたいなものってことなのかしら?」 「子供みたいに踊っちゃうってことかもよ」 「ああ、子供踊りで、子踊りってこと」 「どんなだろうね」 「あ、こんなんとか?」 彼女は、両腕を半分くらい上げたバンザイで左右にヒラヒラ振り、喜んだような動きをする。 淡々と抑揚なく言う。 「いやぁほぉーい」 「なるほど

    だから、なんだと言われても・・・。シリーズ その32 - 菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。
    yuka7rin12
    yuka7rin12 2010/04/03
    映画監督菱沼康介氏による短編小説。 話中の男女にならって、おもわず小躍り♪
  • だから、なんだと言われても・・・。シリーズ その31 - 菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

    『ひろいもの』 寒空の下、街を繋ぐ公園の道を、背の人が、肩をいからせ、歩いている。 「ちくしょー、冬っ!さみいよっ!」 悪態を飾るように、携帯電話の着信音が流れる。 背の人のではない。 音の元を探すと、ベンチの足元に、震える携帯電話。 どうやら、誰かが落とした携帯電話のようだ。 「この場合、出るべきか?出ざるべきか?それが問題だ」 電話は切れる。 「自分が選ばなければ、時間が選ぶ、か」 なんてことをつぶやいていると、再び電話が鳴る。 「一度目は偶然。二度目はチャンスかね」 と、今度は、出てしまう。 「あの、もしもし」 「あ、すいません。この電話の持ち主なんですけど、今、それどこにありますか?」 「えーと、三角屋根の時計がある公園」 「神社の隣の公園ですよね」 「そうそう。神社を背にするベンチのところです」 「よかった!あ、今、取りに行きたいんですけど、まだお時間大丈夫ですか?」 「どれ

    だから、なんだと言われても・・・。シリーズ その31 - 菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。
    yuka7rin12
    yuka7rin12 2010/03/29
    映画監督菱沼康介氏による、短編小説です。冬の物語をぜひ味わってください。
  • だから、なんだと言われても・・・。シリーズ その30 - 菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

    『電気が走る』 夕焼けがそろそろオツカレの頃。 若い夫婦が、家に帰ってくる。 「ただいまー」 「ただいま」 夫は、手早くを脱ぎ、買い物袋を台所に置く。 板襖を片方開け、こじんまりとしたアパートの八畳間へ入っていく。 は、流しの縁に手をかけ、ブーツを脱ぐ。 夫は、紐を引き、電灯をつける。 電灯は、チカチカと白と黒を繰り返す。 じっと待ってみても、チカチカは続く。 が、夫のそばに来て、二人で、電灯を見上げている。 もう一度、紐をカチカチカチカチと引く。 電灯は、チカチカのまま。 「切れたねー」 「買い置きは?」 電灯の橙色の豆球が、ぽぉっと燈っている。 その下で、夫婦が、向き合っている。 は、合わせた両手をぐるっとさせてつくった穴を天井に掲げ、片目で中をのぞいている。 夫は、左手の甲に右手の人差し指を押し付けて、皺をつくっている。「ジャンケン、ジャンケン、ジャンケン、ポン」 夫は紙、

    だから、なんだと言われても・・・。シリーズ その30 - 菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。
    yuka7rin12
    yuka7rin12 2010/03/17
    菱沼康介監督による、惚れ直し夫婦のお話。大人の童話、もっと書いてください。
  • だから、なんだと言われても・・・。シリーズ その26 - 菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

    『またと暮らしたい』 少し昔。 あるところに、愛し合う老夫婦がいた。 人がうらやむほどの仲の良い夫婦だった。 いつも手をつないで歩いているほどだった。 ある日。 が病気になった。 治らぬ重い病気だった。 夫はを思い、行事でしか祈らなかった神に願った。 「またと一緒に暮らさせてください」 夫の願いが通じたのか、夫もと同じ病気になった。 二人は同じ病室に入れることになった。 二人は、検査へも手をつないで行った。 二人は、最期まで共に暮らしたということだ。 解説: たまにこういうのを書くんですね。 短編というにも短い小説。 掌編と言っていいんですかね。 学生時代に、アメリカの『サドン・フィクション』という、こういう短い小説を集めたを読んでから、時々。 いや、待てよ・・・。 中学時代にも、こんなのを書いていたなぁ。 レポート用紙一枚小説として。 いつか、シナリオに使えるんじゃないかって

    だから、なんだと言われても・・・。シリーズ その26 - 菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。
    yuka7rin12
    yuka7rin12 2010/01/21
    掌に収まる可愛い小説♪
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