澤西:私たちはこれまで、日本文学のデータベース「青空文庫」で特定の地名を検索し、そのキーワードを本文に含む作品を読むことで、土地が文学にどのように描かれてきたのかを鑑賞する、というイベントを行なってきました。作品鑑賞までが第一部で、その地名を用いた短い小説をイベント前日に、それぞれ書き下ろし、朗読してコメントしあうのが第二部という、二部構成です(※)。別府、富山、静岡、尾道、岡山とつづき、今回は「鴨川」をとりあげようと思います。コロナ以前は現地に行くことを大切なルールにしていて、我々の中ではこのイベントを「勝手に町おこし」企画と呼んだりしていました。いわば自前で文学レジデンシーをしていたのかもしれません。 円城:今回は、表記ゆれも含めて、「鴨川」「賀茂川」「加茂川」の三つのワードで検索したところ、71作家の作品がヒットしました。文学テキストの本文を参照しながらイベントをオンラインで行なうこ