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ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (4)

  • セフレですよ、不倫ですよ、ねえ、最低でしょ - 傘をひらいて、空を

    仕事の都合で別の業種の女性と幾度か会った。弊社の人間が、と彼女は言った。弊社の人間が幾人かマキノさんをお呼びしたいというので、飲み会にいらしてください。 私は出かけていった。私は知らない人にかこまれるのが嫌いではない。知らない人は意味のわからないことをするのでその意味を考えると少し楽しいし、「世の中にはいろいろな人がいる」と思うとなんだか安心する。たいていはその場かぎりだから気も楽だし。 彼らは声と身振りが大きく、話しぶりが流暢で、たいそう親しい者同士みたいな雰囲気を醸し出していた。私を連れてきた女性はあっというまにその場にすっぽりはまりこんだ。私は感心した。彼女は私とふたりのときには同僚たちに対していささかの冷淡さを感じさせる話しかたをしていた。 どちらがほんとうということもあるまい。さっとなじんで、ぱっと出る。そういうことができるのである。人に向ける顔にバリエーションがあるのだ。私は自

    セフレですよ、不倫ですよ、ねえ、最低でしょ - 傘をひらいて、空を
  • このタイトルちょっと高尚なんで変えてもらっていいですかね - 傘をひらいて、空を

    出版市場は実は縮小していない。出版されるの数は増えている。大ヒットが出にくい、書き手と出版点数の増加でパイが小さくなって専業作家が成立しにくい、作家以外の職も担い手が分散している、そういう状態である。 わたしの職能は雑誌編集、単行企画、ライティング。特技は特急テープ起こしと他人の原稿の校閲。さる老舗出版社の専業校閲さんから「校閲部門希望で入社試験を受けてもいい」と褒めてもらったことがある(誇らしい)。一緒に育った妹に言わせれば、「お姉ちゃんはちっちゃいときから、字が書いてある紙の束があればだいたいOKなんだよね」とのことである。たぶん死ぬまでそうなんだと思う。 勤務先に大きな不満があったのではない。それでもわたしは十数年つとめた出版社をやめた。会社員生活よりフリーランスのほうが(たとえ収入が激減しても)総合的に幸福な人生を送れると判断したからだ。わたしは元勤務先やつきあいのあった出版社

    このタイトルちょっと高尚なんで変えてもらっていいですかね - 傘をひらいて、空を
    yuki_furu
    yuki_furu 2019/08/22
  • 働いているだけで背後から石を投げられる話 - 傘をひらいて、空を

    だからさあ槙野さんみたいな人は俺の嫁さんみたいな人に感謝してほしいわけよ。突然の大声に視線を向けるとすこし離れた席に私の嫌いな同僚がいて私の嫌いな笑いを笑っていた。この人と話をすると不愉快になると入社当初から思っていた。幸いなことにふだんの仕事で直接やりとりすることはごく少なく、あっても事務的なやりとりだけですむ。 私は情熱的に人を憎むことがあるが、それは戦うべき何らかの理由があるとき、あるいは嫉妬などがあるときだ。彼はその対象ではなく、ただいると不愉快なのでいないほうがいいと、そう感じている相手だった。そういう相手とは同じフロアに勤めていてもなぜだかあんまりすれ違わない気がする。そう言ったら昔、そりゃあ脳みそがよぶんなものを認識しなくていいようになにか処理しているんだ、と言われたことがある。私の脳にはそんなに便利な機能がついているのかなあと思った覚えがある。そんなだから今日も、その人がそ

    働いているだけで背後から石を投げられる話 - 傘をひらいて、空を
  • 弱者の毒薬 - 傘をひらいて、空を

    男の人が泣くのを見たのははじめてだったから、少し驚いたけれども、いやではなかった。かわいそうで心が痛んだけれども、自分に心を許して甘えてくれるのは少しうれしかった。落ち着くまで頭を撫でてあげるのが好きだった。そんなにしょっちゅうではなくて、結婚するまで三度ばかりあったことだった。かよわい人なのだと思った。心のやわらかい、やさしい人なのだと思った。実際のところたいていの人は彼をやさしいと言った。彼女はそれがうれしかった。そのようにして彼女は彼のになった。 彼らはともに職を持っていたから、家のことはあらかじめ決めて双方がおこなっていた。彼は時折それをできないことがあった。しかたないのねえと彼女は言った。笑ってそれをしてあげた。ありがとうと彼は言った。そのようなことが何度かあった。一度しなかったことを彼はその後もほとんどしなかった。してくれるかな、と彼女は言った。彼は何も言わなかった。彼女は待

    弱者の毒薬 - 傘をひらいて、空を
    yuki_furu
    yuki_furu 2014/03/25
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