アニー・ディラード『本を書く』は一読、わたしにとって、かなり重要な本になった。今後の人生で、何度も何度も読み返すことになる。その度に、発見し、叱咤され、伸ばした背中を押されるだろう。 これは、よくある執筆のノウハウではない。「本を書く」とはどういうことかを、自分の作家人生を振り返りながら、冷徹に精確に伝えようとしている。著者はアニー・ディラード、『ティンカー・クリークのほとりで』でピューリッツァーを受賞している。削ぎ落とされ、非常に洗練された文を書く作家だ。 「書く」行為に厳しくあろうとする意気込みと自信に圧倒されながら読む。うんと間口の広い『実践小説教室』の後だけに、読み進めるほど背筋はどんどん伸びていく。ふんだんに出てくるメタファーや挿話は、ユニークで分かりやすいが、そこから「書く」ヒントを得るのは読者の自由だ。 たとえば、何を「書く」のかについて、ヘンリー・ソローを引いてくる。 ソロ