川崎重工業のタイ工場では、欧米向けに輸出する二輪車を生産する。インド、フィリピン、インドネシアなどアジア各国で部品と人材を融通する「大部屋生産」で、為替変動などマクロ経済の変化に対応してきた。マザー工場となる日本の明石工場に並ぶ生産品質を確立したタイ工場は、「人づくり」という新しい課題に挑戦している。 「疑うこと」から始めよう 「まずは『疑うこと』から始めてください」――。作業着を身に着けたタイ人を前に、河合知剛シニアマネジャーは問いかけた。昨年2月、川崎重工業の加古川工場(兵庫県加古川市)から、カワサキ・モータース・エンタープライズ・タイ(タイ工場)に赴任してから口を酸っぱくして繰り返した言葉だ。 タイ工場は首都バンコクから南東に110km離れたシラチャにある。牧歌的な空気が流れる港町に育ったタイの従業員たちは「基本的にいい人ばかりだ」(河合氏)という。それが「モノ作り」においては問題だ