とてもためになる本。負の所得税とベーシック・インカムの差異と類似点も明瞭に解説されていて勉強になる。ベーシック・インカムが勤労インセンティブ、または賃金労働(勤労インセンティヴと等価の問題ではない)の問題とどう関連しているかが、本書の中心的なテーマだろう。後者の賃金労働(の制度的前提=福祉国家の理念そのものと山森氏は指摘している)については、ベーシック・インカムの構想は、僕の考えでは理念的な意味で対立したものだと思う。 もっとも実践的な制度設計では共存可能だろうけど。これは本文中でもバートランド・ラッセルがかなり明白に言い切っている、ことを山森氏は紹介している。日本でも生存権の認承が、賃金労働と無縁な形で認められるべきだとする主張はあった。例えば養老年金問題に関する福田徳三と桑田熊蔵の論争を参照されたい。福田は後にラッセルの考えも自分の中でこなし、「日本のラッセル」ともいわれた。 山森氏の