お姉さんはお元気、と訊くと彼はふうとため息をつき、理不尽な過程の果てに刑罰を執行された冤罪者みたいな声で、近ごろ姉さんに醒めちゃってさ、と言った。私はひどく感銘を受け、心をこめて、異常だ、と言った。日常語ばかりで構成された短文ひとつがここまで異常なのは実にすばらしいことだよ。お姉さんをよほどのこと好きだったんだね、そしてそれは過去のことなんだね、悲しいことに。悲しいことに、と彼は完全な無表情でこたえ、それからかわいそうな子どもの反射運動として、何百回もペーストされた笑顔を見せた。 彼の父は医師といえば父自身とアルバイトのほかに誰もいない小さな医院の院長で、姉はその非医学的な側面を、やはりアルバイトを雇いながら、その一手に引き受けている。専業主婦の母親の調える完璧な朝食を彼らはかこみ、彼らの患者を悪しざまに罵って、あんなのでも診なくてはいけないんだから、と笑う。彼はその健全な食卓の隅の定位置