そういえば最近とてもいい文章を読んだんだ。へえ、なあに、私は文章が好きだよ。知ってる、でもあれは槙野、あんまり好きじゃあないと思うな、達者だとは言うんだろうけど、たぶん読んでる、ほらあの、マンガ家を脅迫した犯人の陳述。あれかあ、読んだよもちろん、全文、たしかに達者だねえ、でも好きではないな、ああいう考えかた。そうだろうね、僕にそっくりだから、槙野が彼と会ったら、戦争が起きる、僕はね、彼があんまり自分と似てるから、ちょっと具合悪くなった、ドッペルゲンガーとか、そういう。 なに言ってんのお、あの犯人が聞いたらそれこそ、きみ、殴られるよ、あのあたりでいちばんの進学校に行って、日本でいちばんとは言わないけど、その次くらいの大学に行って、有名な会社に入って、華やかなポジションに就いて、羽振りよく暮らしてて、人に嫌われているんじゃなくって、友だちがいて、恋人だってそのときどきでちゃんといて、いや、いな