小学5年の頃、母親と一緒に料理やお菓子作りをしたという話を同級生からよく耳にするようになり、自分も母と料理をしてみたいと思った。そこで、母にお願いしてみた。 「みんなお母さんと一緒にご飯やお菓子を作ってるんだって。私も料理をしてみたい」 母は「ふーん」と言っただけで、その話は終わった。仕事が忙しいからそれどころではないのかもしれないと私は思った。 ところが、夏休みの前日、事態は急展開した。 「はい、これ食費ね。あとこれが料理の本。やったー!やっとこの日がきたー!やっぱり娘は夫より役に立つ!」 母は、狂喜乱舞しながら、1万円札と子供向けの料理本を私に渡した。何かが違うと思い、「えーっと」と口を開こうとした私に母は続けて言った。 「朝ご飯は私が作るから大丈夫」 何が大丈夫なのかさっぱり分からなかったが、こうして私は夏休みの期間中、昼食と夕食を作ることになった。