前線から5キロほどのウクライナ北東部ハルキウ郊外。取材に同行していたウクライナ兵が、突然大きな声をあげた。 「ドローンが近づいてきている。今すぐここを離れなくては!」 偵察用と思しきドローンの飛来。ロシア軍が飛ばした可能性が高く、ウクライナ兵が見つかれば兵器による攻撃の対象となる可能性がある。状況を把握する間もなく車に飛び乗り、来た道を猛スピードで戻った。 つい、7月後半のことだ。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって半年。私は、侵攻当日から今に至るまで、あわせて3度現地入りした。 意図的に爆撃された小児病院、戦車にひき殺された父…ウクライナ各地で、耳を塞ぎたくなるような凄惨な出来事が起きていた。 そして今回の取材では、ロシアの仕掛けたプロパガンダの被害にあい、「ウクライナ人の敵」となったある“おばあさん”に出会った。彼女の平穏な人生を狂わせたきっかけは、現代の戦争を象徴するような「