今や3組に1組が離婚すると言われ、離婚調停や離婚訴訟は珍しいものではなくなってきた。そんな中近年、あらわになってきたのが妻を精神的・経済的に支配する”モラ夫(モラハラ夫)”の存在だ。 彼らは妻が決死の思いで別離を選ぶと激しく抵抗し、あらゆる手を使って引き戻そうと画策する。彼らの多くは反省がなく、第三者が見ても承服しがたい理屈を通そうとするのが特徴だという。当連載では、そうした“モラ夫”と多く対峙してきた弁護士が、ケーススタディを通じて日本の男女観、夫婦問題に一石を投じる。 私、大貫憲介は30年間弁護士として働いてきた。その間、最も多く扱ってきたのが離婚案件である。平均年間100件の離婚を扱ってきたと仮定すると、30年間で約3000件の離婚案件を見てきたことになる。 その離婚実務から得た知見をお話ししていきたいと思う。 日本の夫婦の典型的離婚案件を説明しよう。50代の夫婦を想定して貰いたい。