2007年03月10日 『編集者 齋藤十一』 日本の雑誌ジャーナリズムに関心や関わりを持ってきた人間で、この名前に何も感じないという者はいないだろう。私自身、書店でこの表紙を見つけた時には思わず背筋にゾクッとするものを感じたし、手にとって開いた途端に出てきた←の写真にも、一瞬その場で凍りつくような気がしたほどだ。 まるでヒッチコックを思わせる風貌。この“素顔”を表舞台に引っ張り出すために過去どれだけ多くの編集者や記者らが神経を擦り減らしただろうかと思う。上の写真が撮影されたのは、彼が鬼籍に入る約2年前、85歳になろうかという時期のことだ。生涯で為すべきことを全て為し終え、悠悠自適の余生を送る老人の風情が漂うものの、気になるのは道化師の仮面のごとき、その「目」だ。 他者が自らの内面に踏み込むのを拒絶し、おそらく終生に渡って自分以外の誰をも信じなかった男。一方で俗世の森羅万象を、まるで惨殺死体