米国における格差問題の大きな謎のひとつは、格差が拡大傾向にあるにもかかわらず、その是正を担う所得移転政策への支持が広がらないことだった。その米国で、公的年金・メディケア(高齢者向け公的医療保険)といった所得移転政策を擁護するドナルド・トランプ氏が、共和党の予備選挙をリードしている。「小さな政府」の立場にある共和党に起こった異変の背景には、White Working Classと高齢者の存在がありそうだ。 White Working Classと高齢者の政府依存 公的年金やメディケアを擁護するトランプ氏の政策は、これまでの共和党の政策とは色合いが異なる。米国では、格差の拡大にもかかわらず、それを是正するはずの所得移転政策への期待は高まってこなかった[1]。むしろ2000年代の米国で存在感を増したのは、「小さな政府」を強く主張するティー・パーティーだった。 共和党では、新しく下院議長に就任した