まえがき この文章は、2006年秋に京都女子大学における宗教講話として 話した記録に手を入れたものです。長い物語になってしまいましたが、 今、世に出しておかなければ死ぬまで後悔するだろうと思い、寸暇を 刻んでタイプしました。なお,これらは父母と祖母から若い頃に聞かされたもので,事実関係等にいくらかまちがいがあるかも知れません.(2007年5月7日、2020年8月15日加筆転載、小波秀雄) 広島からの出発 みなさんこんにちは。今日はふだん私が教室でしゃべっているのとは少し違って、私の両親についての長い長い話をいたします。 紫の閃光 一九四五年、昭和二十年八月六日のことです。私の父は少人数の部隊とともに広島市郊外の丘陵地で、早朝から訓練を行っていました。この年の春以来、我が物顔で空を飛び回るようになっていたアメリカの飛行機は、珍しく姿を見せず、静かで、よく晴れ上がった空が広がっておりました。