1. 社会方言のない「方言研究先進国」 本稿のテーマである「方言から見た日本語らしさ」を述べるにあたっての話は、まず、「方言」という用語がどう認識されているかという点に触れなければならないところから始めなければならない。日本語でいうは、「方言」は主に、ことばの地域的変異として捉えられている。欧米の諸言語では、社会階層によることばの違いを差す「社会方言」という概念が存在する(そして、アメリカには「黒人俗英語」という「民族方言」がもあるが)が、日本語にはこれに相当する言語変種はないので、欧米の方言学者の目から見れば、社会方言がないことがは日本方言の一つの特徴であるように思われる写る(ロング1997a)。 世界の言語を見た場合、地理的な変異(つまり、地域方言)がない言語体系はほんとどないと思われている。それに比べて、社会方言という現象は、欧米のような工業化や都市化が進んだ資本主義社会で主としてに