大戦略を考える ――ビザンツ帝国を中心に エドワード・ルトワック 全ての国家には、認識していようとなかろうと、大戦略が存在する。それが必至なの は、大戦略というものが、それぞれが「大戦略」を持つ他国の行く末を左右することを ねらって、知識と説得力、現代の言葉で言えば情報と外交が、軍事的な強さとどの程度 相互作用しているのかということを意味しているに過ぎないからである。 全ての国家には必ず大戦略が存在するが、全ての大戦略が同等という訳ではない。正 確な情報によって説得と強制力がそれぞれうまく発揮され、利用可能な資源から最大の 力を引き出すようそれらが相乗効果を得るよう組み合わさってはじめて、一貫性と有効 性を有する。 誤った武力の行使によって説得の成果が失われる、 あるいは中立国の反感 を買い、敵国を利し、同盟国を失望させるような不器用な外交によって戦場での得がた い勝利が台無しになること