不平不満研究事件(「フェミニズム版ソーカル事件」と呼ばれることもある)について、ラゲルスペッツ(Lagerspetz)という社会学者の論文を読んだので、それを簡単に紹介したい*1。 事件の概要 不平不満研究事件(The Grievance Studies Affair)とは、2018年にピーター・ボゴシアン、ジェームス・リンジー、ヘレン・プラックローズの三人の研究者(以下BLP)が、彼らが「不平不満研究」(Grievance Studies)と呼ぶものを対象にしていくつかの学術雑誌に偽論文を投稿し、その一部が採択されたというものだ。 三人の説明では、「不平不満研究」とは具体的にはジェンダー研究・批判的人種理論・ポストコロニアル理論や、他の「〇〇理論」と呼ばれるものに基づく分野(人文系だけでなく、社会学や人類学を含めた社会科学にも存在する)のことを指す。これを彼らがなぜ「不平不満研究」と呼ぶ