ライターの田中亜紀子さんの父親は、元教師で無事故無違反というゴールド免許。日に4回くらい車で外出することが気晴らしだった。しかし、明らかにおかしい行動が続き、認知症と判断される。それでも医師たちは「権限がない」と運転を自主的にやめるように優しく語りかけるだけだった。 悩む田中さんが知った、「認知症の診断を受けたら運転免許の取り消しに向けた手続きがある」という事実と、その手段。しかしそれを知ってからもさらになお、修羅場が待っていた……。 「その病院と医師の名前をこっそり教えてもらえませんか? 大事にはしませんので」 2017年の秋、ようやくたどりついた、認知症の高齢者の運転を強制的にやめさせられる可能性。81歳の父が認知症と診断されてもなお、「やめさせる権限」がある場所がない――探し回ってたどり着いたのは公安委員会だった。そこから電話をまわされた運転免許センターの担当者に、病院では権限がない