2009年3月3日発行 東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門 上 昌広 今回の記事は村上龍氏が編集長を務めるJMM (Japan Mail Media) 2月25日発行の記事をMRIC用に改訂し転載させていただきました。 先日、医師臨床研修制度の見直しが大きく報道されました。5年前、「臓器を見て人を見ない医師ばかりになり日本の医療が荒廃している。すべての医師にプライマリケア(初期の幅広い診療)を」という理念を掲げ、鳴り物入りで登場した制度でしたが、あっけなく方針転換されました。 そこで今回は臨床研修制度見直しの背景を紹介し、わが国の医療行政が抱える問題点を議論したいと思います。 【 制度導入前から見えていた破綻 】 繰り返し報道されているとおり、2004年に導入された臨床研修制度は、地方の医師不足を加速させる結果を招きました。しかもそれは、制度導