昨年パレスチナを訪問した折、同行メンバーにデヴィという若いユダヤ系アメリカ人の舞台女優がいました。デヴィは反シオニストですが、そのお父さんはホロコーストの生き残りで、いったんはイスラエルに移民したけれど後にアメリカに移ったのだそうです。もともと彼はシオニストではなかったのですが、第二次大戦後のヨーロッパのすさまじい窮状では、イスラエルに移民する以外に選択の余地などなかったらしい。大戦後に大量のユダヤ人難民がパレスチナに移住しましたが、民族の故郷に「帰還」してユダヤ国家の建設に邁進するというプロパガンダとは裏腹に、この人たちは必ずしもそれを望んでいたわけではなかったようです。行き場のない難民たちが、現地アラブ人との紛争を抱える土地にいやいやながら送り込まれたというデヴィの話は、ずっと心にひっかかっていました。この事情を詳しく説明する興味深い本を見つけたので紹介します。 Yosef Grodz