米国ではコロナ禍を受けて停止していた学生ローンの支払が2023年10月から再開される。本稿では学生ローンの支払再開が米国経済に与えるインパクトについて考察したい。 まず、コロナ禍における学生ローンをめぐる動きついて簡単に振り返る。 感染拡大初期の2020年3月に成立した「CARES法(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act)」により、米国の学生ローン支払は停止された。具体的には連邦学生ローンの毎月の支払が免除され、利率も0%に引き下げられるなどした。当初は2020年9月30日が期限であったが、コロナ禍の長期化とともに何度も期限が延長されてきた1。 トランプ政権、バイデン政権で合計8回の期限延長がなされたが、2023年6月3日に連邦債務の上限を一時的に停止する「財政責任法」が成立し、その中に学生ローンの返済一時停止措置を終了する条