堤防上に立って鬼怒川の水位を見ていたら、足元のアスファルトが目の前でみるみる割れ始めた。 【写真】濁流の中、電柱にしがみつく男性(左)を救出する自衛隊員=10日午後3時10分、茨城県常総市、朝日新聞社ヘリから、岩下毅撮影 「やばい!」。茨城県常総市三坂町のタクシー運転手坂井正雄さん(64)は川に背を向けて駆け下り、100メートルほど先の自宅へ急いだ。 自宅の隣にある畑の様子を確認し始めた時、流れてきた水にのまれた。近くの電柱に必死につかまるが、水位は増し、すぐに腰あたりまで達した。 気づくと、妻(60)がいるはずの木造2階建ての自宅は流され、隣の家にぶつかっていた。周囲の家も、次々に流されていく。 数メートル先の車の屋根の上には、長男(25)が避難していた。「大丈夫かーっ。こっちに来い」。長男は「大丈夫」と返してきたが、上流から来た流木のようなものが車にぶつかった瞬間、あっという間