本当は怖かった北杜夫 今、北杜夫がちょっとしたマイブームだ。 このブームは、古本屋で見かけた「輝ける碧き空の下で」の第一部を読んでからだ。 昔、北杜夫作品を読んだとき、学生の浅知恵で「北杜夫は余裕の作家」だとイメージを固めていた。ユーモラスな余裕をもって淡々と語る文化人だと。そんな失礼な印象を持っていたのだ。浅はかにも。 古本屋で手に取った「輝ける碧き空の下で」の第一部を、眩暈がするような思いで一気に引き込まれて読んだ。 この作家はすげえと思った。 この作家は怖いと思った。 こんなにすごい作家だったのか。 こんなに怖い作家だったのか。 * 「輝ける碧き空の下で」は、南米に移民した日本人の姿を描いた群像劇だ。 美味い話を求めて南米に渡って、あるものはプランテーションで搾取され、あるものは渡り歩いて苦しみ続ける。 あとがきで「小説の表現の限界を超えている」と(半分悪い意味で)評