女子高生と山月記 「虎になる」というフレーズが流行った。 高校時代の話だ。かつて鬼才と呼ばれた男が、己の心に潜む獣に振り回された結果虎になる話を授業で習った。重い題材なのにどうにも心にひっかかる上、人間が虎になるという衝撃的展開に驚いた。加えて、「尊大な羞恥心」だとか「臆病な自尊心」とかいう妙に語呂の良いワードが作中の鍵として登場することから、わたしたちは授業が終わってしばらく経っても読後感に引きずられ、結果「虎になる」というフレーズを局地的に流行らせた わたしたちは虎になった。主に葛藤してどうしようもない時や人間関係が煩わしい時、そして自分が嫌いになった時に。具体的に言うならテスト前や恋愛にまつわる他者とのいざこざ、理想と現実の狭間でもがいた時に、現状の気怠さを「ほんと虎になるわあ」と溜息交じりに吐き出したのだ。 仲のいいグループだけで使う暗号のような、気怠さの共有コードのような使い方を
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