医者の不養生としての睡眠不足─勤務医のメンタルヘルスケア─ 獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授 井原 裕 大学病院勤務という仕事がら,医師のうつ状態もかなり診てきた.治療は難しくない.多くは,原因がはっきりしているからである.「医者の不養生」,それにつきる. メンタル系不養生の内実は,睡眠とアルコールである.後者は前者に強い影響を与えるので,実質的には睡眠だけ,といってもいい. 睡眠は「建設」 これまで,医者はとかく短時間睡眠を武勇伝として語りがちであった.しかし,私どもはサイエンスの素人ではないのだから,科学的にみて妥当なことを語ろうではないか. 生化学的にみて,睡眠は「休息」ではない.むしろ,生体にとって積極的な「建設」の意味をもっている.睡眠中,身体は休んでなどいない.むしろ,勤勉に建設作業を行っている 睡眠中,成長ホルモン,プロラクチン,甲状腺刺激ホルモン,副腎皮質刺激ホルモン