この章では、「的を得る」の正誤について述べられた文献や、この表現の使用実態を調査した資料などを見てみます。 まずは、「的を得る」について書かれた文献を年代順に見てみます。 「的を得る」はいつから注目されるようになったか 私が調べた限りでは、「的を得る」について初めて言及された文献は1969年のものです。このときすでに「〈的を射る〉と〈当を得る〉の混交」が発生の原因に挙げられています。 ※用例・文献の引用方法について 1969年 また、意味の類似も混合をひき起こしやすい。「的を射た」と「当を得た」の「的」と「当」(めざすもの)とが交錯して、「的を得た」や「当を射た」を生じて、結構、使われている。 (「言葉は美しい コトバの競合脱線」『読売新聞』1969年8月22日付 朝刊 9面) 1960年代にはすでに「的を得る」の言い方がある程度広まっていたことが、この記事から分かります。 ※この新聞記事